『ラーゲリより愛を込めて』山本幡男を二宮和也が熱演~12月9日公開!

映画『ラーゲリより愛を込めて』が12月9日に公開されます。

ラーゲリとは当時のソビエト連邦に於ける強制収容所を指し、第二次世界大戦時に捕虜になった多くの日本人がシベリアなどにある収容所に送られ、厳寒の地で強制労働を強いられました。

この映画の主人公「山本幡男」氏もその一人でした。

山本幡男氏は「北東アジアの諸民族」という本を出版するほどのロシア通であった人物ですが、捕虜として日本の地を踏むこと叶わず異国の地で命を落としました。

その山本幡男氏の残した遺書を生き残った仲間たちが書類としてではなく記憶として日本に持ち帰り、奥様へ届けたという感動的な実話です。

併せて極限状況にありながらも妻子や故郷への思いを持ち続けた人間の尊厳を描いた秀逸な作品です。

『ラーゲリより愛を込めて』原作は俳人・ノンフィクション作家の辺見じゅん氏

辺見じゅん氏の父親は俳人でのち角川書店の経営者となりました。

その影響もあり、幼い頃から和歌・俳句に親しんでいたそうです。

ある時、戦艦大和で息子を失ったという母親に出会い、息子が綴った手紙を見たことから兵士とその遺族の思いを書こうと決意したそうです。

ノンフィクション作家として歩み始めた辺見じゅん氏はの作品は

  • 「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」
  • 「男たちの大和」・・新田次郎文学賞
  • 「女たちの大和」
  • 「 昭和の遺書―南の戦場から」

などの作品を生み出し、第11回講談社ノンフィクション賞第21回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞しています。

これらの作品に共通するのは人間としての尊厳を追求していることです。

辺見じゅん氏のモットーは「歴史年表にその名が乗るような人物よりも、無名の庶民こそが真の勇気の持ち主にして学ぶべき英知の持ち主である」として山本幡男氏を典型例として強調しています。

辺見じゅん氏の感想の二例をウィキペディアより引用しますと・・

山本幡男という、一般にはまったく無名であった一人の日本人。彼は、シベリアの収容所生活という逆境にあっても、自らの信念を最後までつらぬいた。その姿の中にこそ、歴史に学ぶ「逆境に打ち克つ」知恵が見てとれる。
??辺見じゅん「収容所から来た遺書」、辺見 2009, p. 144より引用

後になって知ったことだが、字数にして約四千五百字、それも癌で亡くなる一ヵ月半前に一晩で書かれたものだった。驚嘆すべき生命力であり、これを書かねば死ぬに死ねないといった一人の男の凄まじい執念の結晶だった気がする。

(中略)

その遺書の一通ずつに私は引き込まれた。老いた母親に先立ってゆく不孝を詫びる息子としての切々とした思い。妻のモジミさんに子等を託す夫としての信頼と感謝にみちた遺書。それらに胸が熱くなったが、何よりも心を動かされたのは、四人の子供たちに宛てられた遺書だった。ああ、これは山本さんの子供たちに宛てた遺書というだけでなく、私たち日本人の全てに向けられた遺書であり、力強いメッセージではなかろうかとさえ思った。— 辺見じゅん「山本幡男の遺書との出会い」、辺見 1990, pp. 339–340より引用

 人間の尊厳とは何か、問い続けた辺見じゅん氏の思いが語られています。

『ラーゲリより愛を込めて』二宮和也が主人公 山本幡男を演じる!

二宮和也は役者としても一流といっても過言ではないですね。

演技に入るとその役柄にピタッとハマってるところが普段見せる顔よりとの落差が憎いかな^^

彼の演技で良かったと思う作品を挙げてみると(順不同)

  • DOOR TO DOOR ?僕は脳性まひのトップセールスマン
  • ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~
  • 青の炎
  • 車イスで僕は空を飛ぶ
  • マラソン
  • 検察側の罪人

など作品多数ですね。

考えさせられる作品が特徴的かな。

嵐というグループ活動の中で、持って生まれた感性がより研ぎ澄まされたって感じの役者ですね。

今から76年前に戻り、過酷な環境の中を生き続け、仲間を励まし、家族に会いたい一心で希望というものを捨てなかった

不屈の精神を備えた人物 山本幡男氏。

難しい役どころだと思います。

「二宮和也」はどのように山本幡男を体現するのか。

実在の人物を描くだけにより高い演技力・表現力が期待される役どころ、感性豊かな二宮和也の見せ所でもあります。

撮影に望んで「ただただ帰ることを想って、行ってきます」と語ったそうです。

家族に合うために日本に帰り着くことが生きる希望だった山本幡男の心情になぞらえて臨んだ筈です。

『ラーゲリより愛を込めて』瀬々敬久監督がメガホンを取った

瀬々敬久監督は佐藤健と阿部寛の共演で映画化された「護られなかった者たちへ

重松清氏のベストセラー小説を映画化した「とんび」などが挙げられる。

阿部寛、北村匠海が共演でした。

瀬々監督の言葉を引用します

「どんな状況でも『それでも生きろ』『希望を捨てるな』。そんなメッセージが山本さんの苛烈な人生からは伝わってきます。先日、山本さんが生まれ育ち、妻のモジミさんが子供たちと戦後を過ごした隠岐の島に行ってきました。山本さんの生家は今はなく竹藪となっていましたが、目の前はすぐに海。海はどこまでも続くようで、ここから人生を始めシベリアの果てにたどり着いた、途方もない旅に思いを馳せました。山本さんら多くの人々を追い詰めてしまった状況を再び作らないよう、戦争の起こした悲劇がもう再び起こらないよう、思いを込めて映画に取り組んでいきたい。そう思っています」と意気込みを語っている。

『ラーゲリより愛を込めて』北川景子が主人公の妻役を演じる

北川景子が二宮演じる山本幡男氏の妻役(山本モジミ)を演じる。

第二次世界大戦中に家族とともにハルビンで過ごしていた山本一家。

突然のが空襲で日本で落ち合おう約束を交わしつつ、一家の大黒柱 幡男と離れ離れとなりました。
幡男は極寒の地シベリアの収容所(ラーゲリ)に抑留されました。

結果、お互い生存確認が分からないまま、死別してしまうことになるのですが 幼い4人の子供を抱えて懸命に生き抜こうとする妻役を演じることにどのように向き合ったのでしょうか。

~以下はリアルサウンド映画部からの引用させていただきました~

「一歩外に出れば、どこまでも続く広い海で、この海も、空も、ラーゲリに繋がっているだろうか、あの人もまた同じ海を、空を、見ているだろうかと、想いを馳せながら過ごした日々だったのではないかと思いながら演じました」とコメントし、モジミの心情に寄り添った深い役作りを行い、撮影に挑んだ心境を覗かせた。さらに、初共演となった二宮について、「お会いした日からもう幡男さんでした。ああ、モジミさんはこの人を愛したのだなと、二宮さんを見て理解しました。そういう意味では役作りには苦労しませんでした」と称賛した

『ラーゲリより愛を込めて』まとめ

12月9日公開予定で少し先のこととなりますが、強い絆で結ばれた真の夫婦愛に感動します。

想像を絶する過酷な労働を強いられながらも祖国日本に戻り妻や子供と再開することを諦めなかった山本幡男氏

主人公山本幡男氏を通して人間としての尊厳を実話に基づいて描いたこの作品から汲み取るものは・・

戦後77年を迎えた今日、戦争を知る人達が日に日に少なくなっていく今日、こういった作品から戦争とは結果何をもたらしたのかを知る・考える契機となると思いますし、そうあって欲しいと願います。

追記:共演者には中島健人・松坂桃李・桐谷健太・寺尾聰・安田顕など錚々たる顔ぶれが出揃っています。